企業型DCで社長も従業員も節税できる仕組み【中小企業向け】

「社長も従業員も、同時に節税できる制度がある」と聞いたら、どう思いますか?

実はそれが「企業型確定拠出年金(企業型DC)」です。 中小企業では「聞いたことはあるけど、うちには関係ない」と思われがちですが、社員数10〜100名規模の会社こそ、最もメリットを受けやすい制度です。この記事では、企業型DCが「なぜ節税になるのか」を仕組みから解説し、中小企業の経営者が知っておくべきポイントをまとめました。
目次

企業型DCとは?

企業型DC(企業型確定拠出年金)は、会社が従業員および役員の老後資金を積み立てる制度です。会社が毎月掛金を出し、加入者が自分で運用商品を選んで資産を育てていきます。

従来の「退職金」との大きな違いは、掛金の扱いです。退職金は支払う時点で損金になりますが、企業型DCは毎月の掛金の時点で全額損金になります。これが節税の起点です。

項目 企業型DC 従来の退職金
損金のタイミング 毎月(掛金時点) 退職時(支払い時点)
資金の拘束 運営管理機関が管理 社内留保
従業員の権利 個人口座で保全 会社の財務状況に依存
税制優遇 掛金・運用・受取すべてに優遇 退職所得控除のみ

掛金の上限(月額):

  • 企業年金なしの場合:月5.5万円(年66万円)
  • 企業年金ありの場合:月2.75万円(年33万円)

社長側の節税メリット

① 掛金が全額損金になる

企業型DCの掛金は、全額「損金算入」できます。会社の利益から差し引けるため、法人税の課税対象が減ります。

【試算例】社長の掛金:月5.5万円(年66万円)の場合

税目 税率(目安) 年間節税額
法人税(実効税率) 約33% 約21.8万円

年間66万円の掛金で、法人税だけで約22万円の節税効果があります。

② 所得税・社会保険料も課税対象外

企業型DCの掛金は、役員報酬とはみなされません。所得税・住民税・社会保険料の課税対象にならないため、役員報酬として受け取った場合と比べて、実質的な「手取り増加」につながります。

  • 所得税・住民税(所得による):10〜20万円前後の差
  • 社会保険料(役員の場合):影響があるケースも
【経営者エピソード】
ある会社の経営者は、満額の月55,000円を掛けることにしました。年間66万円が課税所得から外れる計算になり、「こんなに差が出るんですか」と目を丸くしていたのが印象的です。役員報酬の額面を変えずに、実質的な手取りが増える仕組みに、最初はなかなか信じてもらえませんでした。

従業員側の節税メリット:「選択制DC」という仕組み

通常の企業型DCは会社が掛金を出します。しかし、より節税効果が高い「選択制DC」という仕組みがあります。

選択制DCとは?

「給与の一部をDC掛金として積み立てるか、現金で受け取るかを、従業員が選べる」仕組みです。DC掛金として積み立てることを選ぶと、その分は給与として課税されません。

【具体例】月給35万円の従業員が、月2万円を選択制DCに積み立てた場合

項目 選択制DCなし 選択制DCあり 差額
課税対象の給与 35万円 33万円 ▲2万円
所得税(概算・年収500万想定) 高い 低い 年3〜4万円の差
社会保険料(本人負担) 高い 低い 年3〜4万円の差
  • 従業員本人:約7〜12万円/年(手取り増加)
  • 会社(社会保険料の事業主負担):約3〜6万円/年(人件費削減)

従業員の手取りが増えて、会社のコストも下がるという構造です。

【従業員への説明時のリアル】
従業員への説明でいちばん多い質問は、「自分はいくら掛けると、実際にどれくらい得になるんですか?」というものです。所得税・住民税・社会保険料が複合的に絡むため、頭ではわかっても自分ごととして実感しにくいようで、個別に数字を出すシミュレーションをその場で一緒に行うようにしています。毎月の差額は数千円でも、10年・20年単位で積み上げると数十万〜百万円超になることがわかった瞬間、「こんなに違うんですか」と表情が変わる方が多いです。

社長も従業員も節税できる理由:全体構造

従業員が選択制DCを選ぶ
  ↓
給与の一部がDC掛金に(課税されない)
  ↓
従業員:所得税↓ 社会保険料↓ → 手取り増加
会社:社会保険料の事業主負担↓ → 人件費削減
  ↓
その削減分を原資に社長の掛金枠を活用
  ↓
社長:掛金全額損金 + 所得税・社保の課税なし

一つの制度で、社長・従業員・会社の三者がメリットを受けられる。これが企業型DCが注目される最大の理由です。

導入前に知っておくべきデメリット・落とし穴

① 掛金は原則60歳まで引き出せない

DCに積み立てたお金は老後の資産形成が目的のため、急な資金需要には対応できません。従業員への説明でも、ここは必ず触れる必要があります。

② 従業員への説明コストがかかる

選択制DCを選ぶかどうかは従業員自身の判断。会社が強制はできません。制度の周知と理解促進が導入後の課題になります。

③ 手続きに6〜8ヶ月かかる

導入には運営管理機関との契約、規約の作成・届け出が必要で、通常6〜8ヶ月かかります。「来期から入れたい」という場合は、今から動く必要があります。

④ 運営管理機関の選定が重要

企業型DCを扱う金融機関は複数あり、手数料・商品ラインナップが異なります。会社の規模や従業員のニーズに合った機関を選ぶことが重要です。

【現場で起きた想定外】
「60歳になっても引き出せないケースがある」という点には注意が必要です。加入時の年齢によっては受給開始が65歳以降になることがあり、「老後のためと思っていたのに、思ったより先の話になる」と戸惑われることがあります。
また、退職金との受け取りタイミングが重なると、退職所得控除の枠を食い合って税メリットが想定より小さくなるケースも見受けられます。

こんな会社に特に向いている

  • ✅ 退職金制度がない・廃止を検討している
  • ✅ 社員の定着・採用に課題を感じている
  • ✅ 社長の役員報酬が高く、所得税・社会保険料の負担が重い
  • ✅ 法人税を下げたいが、合法的な経費が限られている
  • ✅ 従業員の福利厚生を充実させたい

逆に、すでに確定給付型の企業年金(DB)がある会社は、掛金上限が変わるため別途検討が必要です。

よくある質問

Q:中退共に加入していますが、企業型DCと併用できますか?

はい、併用可能です。中退共は役員が対象外ですが、企業型DCは役員も加入できます。中退共を従業員の退職金制度として活用しながら、企業型DCで役員・従業員の節税を上乗せするケースは実際によくあります。ただし、掛金の合計が法定上限を超えないよう設計が必要です。

Q:従業員が選択制DCに参加してくれないとどうなりますか?

選択制DCは任意参加です。参加しない従業員がいても会社への直接的なデメリットはありません。ただし、参加率が低いと制度の効果が限定的になるため、導入時の説明が重要です。実際の手取りシミュレーションを個別に見せると、参加率が上がるケースが多いです。

Q:導入後に掛金額を変更できますか?

通常の企業型DCでは、掛金の変更に規約の変更手続き(厚生局への届け出)が必要です。選択制DCでは、規約の設計次第で年1回など定期的な変更を可能にする設計もできます。将来の見直しも見越した規約設計を、導入時に整えておくことをおすすめします。


まとめ

対象 メリット
会社 掛金が全額損金→法人税軽減。社会保険料の事業主負担も減
社長 掛金が所得税・社保の課税対象外→実質的な手取り増加
従業員 選択制DCで給与課税が減少→手取り増加

「節税をしながら、従業員の福利厚生も充実させたい」と考えている中小企業の経営者には、ぜひ検討してほしい制度です。導入には専門的な知識と手続きが必要です。まずは専門家への相談から始めることをおすすめします。

【お問い合わせはお気軽にどうぞ】

企業型DCの導入は、仕組みを正しく設計すれば、会社にも従業員にも確実にメリットが出る制度です。ただ、運営管理機関の選定や規約づくり、従業員への説明まで、やるべきことは意外と多いのも事実です。

「うちの会社に合うかどうか知りたい」「まず概要だけ聞いてみたい」という段階でも構いません。K.I.パートナーズでは、制度の仕組みの説明から導入支援まで、中小企業の実態に合わせてサポートしています。まずはお気軽にご相談ください。

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※本記事は執筆時点の法令・制度情報に基づいて記載しています。企業型確定拠出年金・小規模企業共済に関する制度は法改正により変更される場合があります。最新情報は厚生労働省または専門家にご確認ください。企業型確定拠出年金に関する制度は法改正により変更される場合があります。最新情報は厚生労働省または専門家にご確認ください。

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