「社員が10人いないと、企業型DCは入れないですよね?」

企業型DCの導入を検討する経営者から、よく受ける質問のひとつです。結論から言うと、社員数に制限はありません。1人の会社でも導入できます。この記事では、社員10人以下の中小企業が企業型DCを導入できる条件と、かかる費用・得られる効果を整理します。
企業型DCに「社員数の下限」はない
企業型DCは、従業員数に関係なく導入できます。法律上の下限はなく、社長1人の会社でも、社員3名の会社でも仕組みの上では導入可能です。
ただし、加入できるのは厚生年金の被保険者に限られます。正社員・役員は基本的に対象になりますが、短時間労働者など厚生年金に加入していない従業員は対象外になるケースがあります。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 従業員数の下限 | なし(1人でも可) |
| 加入資格 | 厚生年金の被保険者であること |
| 役員の加入 | 厚生年金に加入していれば対象 |
| パート・アルバイト | 厚生年金未加入の場合は対象外 |
「うちは小さい会社だから関係ない」と思っていた経営者が、実は導入の要件を全て満たしていたというケースは珍しくありません。



社員5名の製造業の社長さんが、ある相談会で「10人以上じゃないと入れないと思ってた」とおっしゃっていました。規模の話ではなく、厚生年金の被保険者かどうかが判断基準なんですよね。「じゃあうちも入れるんだ」と知った瞬間、表情がパッと変わるんです。こういう場面に立ち会えると、この仕事をやっていてよかったと思います。
導入にかかる費用の全体像
企業型DCの費用は大きく3種類に分かれます。小規模企業が導入を検討する際に、特に気になるのがこの費用感です。
① 初期費用(導入時のみ)
| 項目 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 規約作成費用 | 0〜10万円程度 | 運営管理機関が無償サポートするケースが多い |
| 社労士・コンサル費用 | 5〜30万円程度 | 設計の複雑さによって変わる |
| 従業員説明会の準備 | 社内工数のみ | 外部費用はかからないことが多い |
② 月額固定費用(毎月かかる)
| 項目 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 事務委託手数料 | 月3,000〜5,000円程度 | 運営管理機関によって異なる |
| 資産管理手数料(信託) | 月数百円〜 | 積立残高に応じて変動することも |
③ 加入者一人あたりの費用(人数に比例)
| 項目 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 口座管理手数料 | 月200〜500円/人 | 加入者が増えるほど合計額が増える |
社員5名の場合のコスト試算(目安):
- 月額固定費:約4,000円
- 口座管理費:300円 × 5名 = 1,500円
- 合計:月約5,500円(年約6.6万円)
年間の掛金拠出額(社員5名 × 月1万円 × 12ヶ月 = 60万円)と比べると、費用は掛金の1割程度に収まります。節税効果(法人税削減)を考えれば、コストは十分回収できる水準です。



費用の話をすると「月5,000円くらいなら思ったより安い」という反応が多いですね。何となく「大企業向けの制度だから高そう」というイメージを持っている方が多くて、実際の数字を見せると「あ、これなら検討できる」となることがよくあります。もちろん、運営管理機関によって金額は変わるので、複数社に見積もりを取ることをおすすめしています。
社員10人以下でも効果が出る理由
① 社長自身の節税効果は人数に関係ない
企業型DCの節税効果の中で、最も大きいのが役員(社長)の掛金による損金算入です。この効果は従業員数に関係なく、社長一人分だけで年間最大21.8万円(掛金月5.5万円・実効税率33%の場合)の法人税削減につながります。
② 一人ひとりの手取りへの影響は同じ
選択制DCを導入した場合、従業員一人あたりの節税効果(社会保険料・所得税の削減)は、会社の規模に関係なく発生します。社員5名でも、それぞれの手取りが増える仕組みは同じです。
③ 採用・定着への効果は小規模企業ほど大きい
大企業と競合する採用市場では、中小企業は福利厚生での差別化が難しい状況です。企業型DCを導入することで、「退職金制度がある会社」として打ち出せるようになります。社員数が少ないほど、一人の採用が会社に与えるインパクトは大きく、この効果は侮れません。
小規模企業が導入する際の注意点
① 固定費が相対的に割高になる
月額固定費は加入者数に関係なく発生します。社員数が少ないほど、一人あたりのコスト負担は大きくなります。社員1〜2名の会社では、費用対効果を慎重に試算する必要があります。
② 従業員の同意・理解が必要
選択制DCは任意参加です。全員が参加しなくても制度は機能しますが、参加率が低いと会社・従業員双方のメリットが限定的になります。特に少人数の会社では、一人の不参加が全体の効果に影響しやすいため、導入前の丁寧な説明が欠かせません。
③ 導入まで6〜8ヶ月かかる
規約の作成・厚生局への届け出・運営管理機関との契約など、導入には一定の手続き期間が必要です。「今期の節税に間に合わせたい」という場合は、早めに動き始めることが重要です。
④ 中退共との併用は設計が必要
中退共をすでに使っている会社が企業型DCに移行または併用する場合、規約設計や掛金の上限に注意が必要です。どちらを主軸にするかを整理した上で、社労士・税理士と連携して設計することをおすすめします。



少人数の会社ほど、導入後の「一人ひとりへの説明」が大事になるんですよね。大企業なら説明会を一度やって終わりでも回りますが、5人の会社だと一人ひとりの納得感が会社の雰囲気に直結します。「なんで給料の扱いが変わるの?」と戸惑う従業員さんがいると、職場の空気が変わってしまうことがある。だから私が入る場合は、個別の面談もセットでやるようにしています。
中退共との違い:小規模企業はどう使い分けるか
社員10名以下の会社では、中退共(中小企業退職金共済)と企業型DCを比較・検討するケースが多いです。
| 比較項目 | 中退共 | 企業型DC |
|---|---|---|
| 役員の加入 | ❌ 原則不可 | ✅ 可能 |
| 掛金の上限(月) | 3万円/人 | 5.5万円/人 |
| 損金のタイミング | 掛金払込時 | 掛金払込時 |
| 国からの助成 | ✅ 新規加入時に助成あり | ❌ なし |
| 従業員の選択制 | ❌ 全員一律 | ✅ 選択制も可 |
中退共は新規加入時に国の助成(掛金の一部補助)があり、導入コストを抑えやすい反面、役員は加入できません。社長自身の節税まで含めて考えるなら、企業型DCの方が効果の幅が広くなります。両方を組み合わせることも可能です。
こんな会社に特に向いている
- ✅ 社員10名以下で退職金制度がない・廃止を検討している
- ✅ 社長の役員報酬が高く、法人税・所得税の節税手段を探している
- ✅ 採用面接で「福利厚生」の質問に答えられるようにしたい
- ✅ 中退共はすでに入っていて、さらに上乗せしたい
- ✅ 従業員の手取りを増やしながら、会社のコストも抑えたい
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 導入できる最小人数 | 制限なし(厚生年金被保険者であれば1人でも可) |
| 月額コストの目安 | 社員5名で月5,000〜6,000円程度 |
| 社長の年間節税効果 | 掛金月5.5万円で約21.8万円(法人税のみ) |
| 導入までの期間 | 6〜8ヶ月 |
「うちは小さいから関係ない」という思い込みで、検討すら始めていない会社が多いのが実情です。社員10人以下でも、企業型DCは十分に機能する制度です。まずは費用と節税効果の試算から始めてみてください。



【お問い合わせはお気軽にどうぞ】
「社員数が少ないけど本当に入れるか確認したい」「費用対効果をざっくり試算してほしい」という段階でも構いません。小規模企業の導入支援も数多く経験してきましたので、実態に合ったアドバイスができると思います。まずは一度、お気軽にご相談ください。
※本記事は執筆時点の法令・制度情報に基づいて記載しています。企業型確定拠出年金に関する制度は法改正により変更される場合があります。最新情報は厚生労働省または専門家にご確認ください。





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